とりねの備忘録

ゲーム日記を中心に何かしら書いてます。

ショートショート小説を書きました『魔女っ子』

 薄暗い倉庫で、ある男が銃を持った4人の男に取り囲まれながら椅子にきつく縛り付けられていた。

 強盗団の潜入捜査に失敗した警察官が、今にも射殺されようとしていたのである。

 一斉に銃口を向けられ、警察官は観念して目を瞑った。

 


 その瞬間。

 「そこまでよ!」

 倉庫のドアが勢いよく開け放たれ、魔法使いのような格好をした女の子が唐突に現れた。

 「な、なんだお前」

 一同は呆気に取られていたが、4人の内の1人は無表情に女の子に向かって引き金を引いた。

 しかし銃口から出てきたのは銃弾ではなく小さな花だった。

 「嘘だろ」

 


 「困っている人は助けなきゃ!」

 女の子が杖を軽く振ると、4人の男はそれぞれ乳牛、メジロ、ミミズ、チャウチャウの子犬に一瞬で変化した。

 「き、君、何を………」

 目の前で起こっている事に対して脳の処理が全く追いつかず、警察官はただただ目を白黒させた。

 「困っている人は助けなきゃ!」

 女の子が杖で警察官にチョンと触れると、きつく縛っていたロープは一瞬で解けた。

 「やっぱり人助けって気分良いわね!それじゃバイバーイ」

 そう言って彼女は嵐のように去っていった。

 

 

 人間だった時の事を完全に忘れてしまったのか、乳牛はゆったりとそこら辺を歩き回っている。メジロはミミズを咥えてどこかに飛び去っていった。

 「こ、こんなのどうやって報告すれば良いんだよ……」

 とても現実とは思えないような事態に、警察官はすっかり途方に暮れてしまった。

 そんな彼の足元に、チャウチャウ犬がクンクン鳴きながら擦り寄ってきた。

 「こいつ……………俺が飼うしか、ないのかなあ」

 チャウチャウは元気にワンと鳴いた。